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今年も薔薇が咲きました

     薔薇の内部

..リルケ作

高安 國世 訳

どこにこのような内部を包む

外部があるだろう

どのような傷に

この柔かな亜麻布はのせるのだろう

DSCF9252n.JPGこの憂い知らぬ

咲き切った薔薇の花の

内海にはどこの空が

映っているのだろう、ごらん

薔薇はただそっと

花びらと花びらとを触れ合わし

今にもだれかのふるえる手に

崩されることなど知らぬかのよう

花はもうわれとわが身が

支え切れぬ。多くの花は

ゆたかさあまって

内から溢れ

限りない夏の日々の中へ流れ入る

次第次第にその日々が充ちた輪を閉じて

ついに夏全体が一つの部屋、夢の中の

部屋となるまで

 

 リルケは19世紀末から20世紀初頭に活躍したオーストリア生まれの詩人です。「薔薇の内部」は1906年に上梓された「新詩集」に収められています。言語を通じて手探りで対象に迫ろうとする事物詩だそうです。

 北門を入ったところに、いささか貧弱ですが薔薇の樹が植わっています。初夏になると、けなげにいくつかのピンクの花を咲かせてくれます。幾重にも重なった花びらには、いったい何が包まれ、隠されているのでしょう。

 

 

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