先日行われたスーパーバイザー現職研修で、粕谷貴志先生が次のような話をされました。
「子どもが変わってきた。その背景には、社会が変わってきたことがある。最近、人間関係づくりが不得手な子どもが増えてい る。それは人とのかかわりが減っているからである。人間関係づくりを身に付けるには、①近くによいモデルがいて、教えられ、②自分でもやってみて、経験し、③やってよかったと実感することが必要だが、それが今はない。『江戸しぐさ』というものがあり、そういうことが昔は子どもに教えられていた。」
学校の図書室に『江戸しぐさ』について書かれた本があり、読んでみると、なるほど確かに、こういうことは今の社会から失われているけれど大切だと思うことがいくつもありました。そこで、『江戸しぐさ』について紹介をしていきたいと思います。
『江戸しぐさ』とは、地方からさまざまな人が集まり、人口100万人を超えた江戸の町で、トラブルを避け、人と人が気持ちよく暮らすために、立ち居ふるまい、言葉づかい、おつきあいの仕方の知恵が生まれ、できていった江戸ならではのマナーのことです。
江戸しぐさ①「うかつあやまり」
人に足を踏まれた時、踏んだ方があやまるのは普通ですが、踏まれた方も、「こちらこそうっかりしていました」と、自分がうかつであったことをあやまります。
お互いにあやまり合うことで、トラブルになりません。
逆に、踏んだ方が相手のうかつを責めるようなことをしたら、けんかになってしまいます。学校で時々あるかもしれません。
江戸しぐさ②「傘かしげ」
傘を差してすれ違う時、相手の肩に雨のしずくがしたたり落ちないように、傘を相手の反対側に傾けます。
自分の行動が相手にどういう影響を与えるかを少し考えてみることが必要です。
同じようなことに「肩ひき」があります。狭いところですれ違う時、相手にぶつからないよう肩をひいて、体をななめにしてすれ違うのです。
江戸しぐさ③「お日和目つき」
道をゆずってもらったり、何かしてもらったりした時、言葉だけでなく、目つきでも感謝の気持ちを伝えます。
よそ見しながら「ありがとう」といっても、感謝の気持ちはあまり伝わりません。
学校で、自分は「あやまった」つもりでも、相手に伝わらず、「あやまっていない」と言われて、けんかになることがあります。
目と目を合わせることで、気持ちが伝わるのです。
(参考 学習研究社「みんなのマナーとルール⑥江戸しぐさ」)