将棋大会の午後の部で最初に講演会がありました。棋王・王将の久保利明氏が「勝負への考え方」という演題で、話をされました。
その中で、「勝負を楽しむ」ということを言われました。
久保氏は小学校で奨励会に入り、17才で4段になり、プロになりました。その時、初段までは早かったのですが、2段になるのに時間がかかったそうです。やっても、やっても負けて楽しくない。がんばっても、結果が出ず、棋士になれなかったらどうしようと不安な日々が続いたそうです。その時、この世界に入った時の気持ちを思い返してみたそうです。プロになりたかった。その前に将棋が好きだった。そして、ある時、開き直って、将棋を楽しもうと決心されたそうです。勝っても負けてもいい、そう思ったら、気が楽になり、だんだん勝てるようになったそうです。今は、負けても、楽しいそうです。勝つか負けるか際どいところにいる自分が楽しいと言われました。
また、色紙によく書く「前後裁断」という言葉について話されました。これは、過去と未来を断ち切って、今に集中するという意味です。将棋の対局は朝から夜まで何時間もかかるそうです。その間に気持ちが揺れます。ミスをした時、いつまでも悔やんでいると、勝つことはできません。ミスは忘れて、今をがんばることが大切なのです。久保氏は王将戦で羽生氏に5度目の挑戦をした7番勝負の2局目が特に心に残っているそうです。最初から最後まで、とてもいい対局で、結果的に負けたのですが、負けたのにすがすがしい気持ちだったそうです。それは落ち着いてできたからこそです。いい対局にしたいという気持ちでできたから、負けてもすがすがしい気持になれたと思ったそうです。結果を出すには、結果を出そうとしないスタンスで取り組んだ方がいいそうです。
他にも、具体的な目標や憧れの人をもつとよいとか、ライバルを見つけるとよいという話もされました。
将棋部の生徒は「ライバルを見つけるとよい」ということが一番心に残ったと言っていました。
こういったことは、将棋に限らず、他の勝負事や勉強にもあてはまると思います。とても参考になりました。