素晴らしい式となることは、もうすでに決まっていました。当日にすることなど何もありません。令和5年度 尾張旭市立東中学校 第48回卒業証書授与式。卒業生が1年生から3年生になるまでに関わってきた方々との間で築き上げられてきたものが全てです。それが、この式に体現されていました。
ここに校長式辞の一部を載せます。
今日は、新たな進路先へ旅立つ卒業生のみなさんに、ぜひ心掛けてほしい2つのことについてお話をしたいと思います。
一つ目は「正解のない成熟時代において、新たな価値を創出することができる頭の柔らかさを持つ」ということです。少子高齢化やグローバル化、戦争や紛争に代表される混迷をきわめる世界情勢、石油やレアメタルなど資源不足の問題など、日本だけにとどまらず、世界的規模で、様々な課題が山積しています。また、AIの普及で今ある仕事の5割はなくなってしまうという試算も出ており、みなさんがこれからはばたく未来の社会は、不透明で予測することが大変難しい社会だということができるでしょう。このような時代に必要な力を、民間から初めて校長となった藤原和博氏は著書の中で次のような力だと説明しました。以前の成長社会では、あらかじめ正解が一つに決まっている問いに、早く、正確に答える力が重視されていましたしかし、現在の日本は「成熟社会」となり、知識や技術・経験を組み合わせて、答えが1つではない問いに対して自分の仮説を出す力や、自分の知識が足りない場合は他者の知恵や技術を借りて、自分が納得できる答えを出す力、そして違っている部分があれば、よりよい方向にどんどん修正していく力が求められると説いています。例えて言うならば、以前はジグソーパズルのように、早く決められた形、正解を探し当てはめていく力が求められていたのが、これからは、レゴブロックのように、基本的なブロックを組み合わせ、自分の想像力を働かせ、今まで無かったものを、納得のいくまで試行錯誤して、自分の表したい世界を表現する力が求められるとのことです。創造性や協調性といった、AIやロボットなどで代替することが難しい力は、あなたたちが修学旅行や学校祭で発揮してきたような、柔軟性があり、独創的な発想だと私は思っています。それらの力を存分に発揮して混迷するこの時代を力強く生きていってください。
二つ目は「周囲の人の思いを自分の力とする」ということです。いつからか、がんばれという言葉をかけることは、がんばっている人にプレッシャーとなるから、あまり使わない方がいいと言われるようになりました。理由の一つとして、もう十分がんばっている人や、がんばりすぎてこれ以上がんばる力がない人には、がんばれと言われてもつらいため、言わない方が良いと言われるようになったと考えられます。ただ、私はあなたたちがそんな言葉をかけてもらったときに、しっかりと言葉に込められた思いを受け取り、さらにもう一歩前進する力に変えることができる人になってもらいたい。本当に、あとひと踏ん張りで、目標に届くと思い、あなたが精いっぱいがんばっていることは当然承知していて、「あと少しだ」とエールを送ってくれている。つらくしんどい時だとしても、かけてもらえた言葉の真意を素直に受け取れるようにしてほしい。時に、応援する言葉ばかりではなく、「そんなことでいいのか」と叱咤激励する言葉もあるでしょう。厳しい言葉の中にも込められた思いに気づき、さらなる成長へとつなげてくれることを期待しています。もう東中の先生や後輩たちは、あなたのすぐそばで、直接応援する言葉を届けることはできなくなってしまいますが、3年生を送る会でもあったように、離れてはいても、あなたたちが新天地での活躍や奮闘することを応援しています。