岩波ジュニア新書で、学術研究の先端知識を中高校生向けにわかりやすく書いた〈知の航海〉シリーズの1冊です。大人が読んでも面白いです。
日本人の遺伝情報の研究をもとにした違った視点からの日本の歴史を知ることができます。
日本列島人をアイヌ人・ヤマト人・オキナワ人・三種の集団に分け、現在から過去にさかのぼる形でその推移を説明しています。また、時代区分も、江戸東京時代(江戸時代~現代)・平安京時代(平安~安土桃山時代)・ヤマト時代(弥生最終期~奈良時代)・ハカタ時代(弥生時代=稲作が伝わり広まった時代)・ヤポネシア時代(旧石器~縄文時代)としています。日本列島人は大きく三段階、第一段階(ヤポネシア時代)に第一波の渡来民がユーラシア各地から日本全体に移住し、第二段階(ヤポネシア時代末期)に第二波の渡来民が大陸や朝鮮半島から日本中央部に移住し、第三段階前半(ハカタ時代・ヤマト時代前半)に、第三波の渡来民が朝鮮半島などから移住して稲作を伝えました。そして引き続き移住が行われました。その過程で、三種の日本列島人が形成され、アイヌ人は北海道にオキナワ人は南西諸島に住むようになったというのです。
移住と地域社会の形成は、もう少し狭い社会でも考えられると思いました。例えば、本地ヶ原でいうなら、昔からこの地に住んでいた人々、戦後、開拓民として移住してきた人々、その後、住宅が増える中、移住してきた人々の三つの集団があるような気がします。そして、三つの集団をまとめるのは、この本地ヶ原という土地の歴史であり、歴史が作り上げてきた文化であると思います。子ども達には、「本地ヶ原の本地っ子」として、その歴史や文化を学び、未来に向けて新たな歴史や文化を創っていってほしいと願っています。