福祉実践教室のあいさつで「車輪の一歩」というドラマの話をしました。山田太一脚本の「男たちの旅路」シリーズの1本で1979年に放送されたドラマです。車輪というのは、車椅子の車輪で、車椅子で生活する若者たちのドラマでした。その中でいくつか心に残るセリフがあるのですが、その一つが、車椅子で拙かつする若者の一人が、自分は人に迷惑をかけてしまう、人の世話にならなければ生きていけないというのに対し、主人公が「人は生きるために必要な迷惑はかけてよい」と言います。「さらにそういうことを迷惑と感じなくなるようにすればよい」と言います。迷惑というと言葉が悪いですが、助け合うということだと思います。
また、ドラマの最後に、車椅子の女の子が駅の階段の下で、「私を上へ上げてください」という場面があります。母親に苦労ばかりかけている自分が嫌で閉じこもっていた女の子が外に出て生きていく決心をするドラマのクライマックスです。「上に上がる」ということは、「成長する」という意味と考えられます。人間は誰でも成長したいと思っていて、そのために人に手助けを求めてよいし、逆に助けが必要な人に手助けすればよいと思いました。このドラマは障がい者のことを描きつつ、実は障がいのあるなしにかかわらずすべての人間にあてはまることを伝えていた気がします。
今ほどバリアフリーの考え方が広まっていない時代のドラマですが、自分にとっては福祉について考えるきっかけになったし、教員の仕事について考える時も、繰り返し思い出されるドラマです。